事例詳細|コンサルティング事例

デリバティブの損失で膨らんだ借り入れは債務免除、そして事業を社員に承継

免除

N社

業種
電子機器メーカー(ファブレス)
売上高
非公開
所有不動産
個人−自宅
担保不動産
個人−自宅
借入金融機関数
5行
借入金額
782,000千円
連帯保証人
社長

電子機器市場そのものの伸びが鈍化する中で、売上減少によって資金繰り悪化。
借り入れは、デリバティブによる損失が大きく
社長は、各金融機関にリスケを要請し、全行応諾。
その後、自社の商品を思い切って絞り込み、黒字化に成功。
以降、毎期黒字に。
しかし、リスケのままでは事業の承継もできないことから、当社に相談。
事業承継に向けて、コンサルティングを開始。

ア)リスケの解消と同時に借り入れをまき直すなどによって返済を開始し、正常化。
  ただし、この場合後継者が保証人になる必要あり。
イ)債務免除によって、借り入れをゼロにし、その状況で事業を承継。
ウ)別会社で事業を継続し、不動産売却など最大返済をした上で現会社は整理。

方向性としては、この3つだったが、すぐに方向性を決めるのではなく、少し時間をかけて、金融機関の状況、経営の状況なども見ながら決定することにした。

どの方法を採るにしても、以下の5つが重要なカギであることから、これらを実行に移す。
①金融機関との信頼関係の構築
②返済意思の表明
③会社継続意思の表明
④親族内後継者ではなく、社員後継であることを金融機関に周知する
⑤金融機関に対し、清算配当率の周知

社員承継ということから、保証債務の解除ができるかどうかがスキーム選択の重要なポイントであり、この点について金融機関と交渉調整を行った結果、
・経営者保証ガイドラインを使った保証解除はできない。
という結論に。

このことから、事業を次世代に残すためのスキームとしては、イ)の債務免除か、ウ)の別会社しかないということになった。

まず、債務免除に向けて行動を開始。
金融機関に対し、清算配当率などを示し、
・会社が潰れてしまっては誰も利することがないということ。
・事業を残すことで、雇用、納税、ということから社会への貢献ができるということ。
・金融機関としても、知名度のある企業を支援したということで、再生支援のモデル事例になるのではないかということ。
を説明し、何度も交渉。
その結果、債務免除をする方向で、メインバンクから下位行まで全行の同意を獲得。

債務免除をする上での具体的スキームとしては、
A)私的整理ガイドラインに基づく再建型私的整理手続き、および債務免除
B)プレパッケージ型民事再生手続き、および債務免除
C)再生支援協議会の中小企業再生支援スキームによる債務免除
が考えられたが、Bのプレパッケージ型民事再生手続きは、この電子機器メーカーの企業価値が大きく毀損する恐れがあり、Aの私的整理ガイドライン、あるいはCの協議会スキームのどちらかで進める方向に。

再建計画に基づき、数年間かけて取り決めた債務を返済し、その時点で債務免除という場合、返済を行う期間、債権者は返済が遅滞なく進むことを期待しつつも、リスクが内在することから、結局、後継者に債務保証を求めることになる。
これでは社員ができないことから、数年かけて再建計画を実行し返済するのではなく、株式あるいは事業を第三者に売却譲渡し、そのお金である程度の金銭を一括で返済することで、残った債務をその時点で免除してもらうというスポンサー売却型で進めることにした。

そのスポンサーを見つける方法として、金融機関は広く募集すべきだという主張を行ったが、
・広く募集したとしても、債務超過企業で技術ノウハウを持たず、販路を保有していることが強みである当該会社に対し、スポンサーとして名乗りを挙げる企業があるのかどうか。
 *財務DDから企業価値はない。
・広くスポンサーを募集する際、いくら守秘義務契約を交わして企業情報を公開するとはいえ、本当に守秘義務が守られるのかどうか。
・すでに技術ノウハウを有する製造委託先が支援を表明しているなかで、他のスポンサーを広く募集する必要があるのか。
 *金融機関は製造委託先ありきでは行内稟議がとれないと主張。
  しかし、製造委託先は他のスポンサーが経営権を取るのであれば、今後の製造委託は受けないと主張。

協議会スキームでは、広くスポンサーを募集すること、協議会の関与内容に対し、当該会社が強い違和感をもっていることから、再建型私的整理手続きで行う方針を決定。
金融機関債権者に対し、
①製造委託先からの支援を受け入れるということ。
②弁護士による再建型私的整理手続きを行うこと。
を説明、支援協力を要請。

金融機関と交渉・調整が難航するが、最終的には全行これを受けいれることになり、以降、手続きを粛々と進め、債務免除が実現。

代表取締役社長は、経営責任をとり、相談役会長に。
担保である自宅は、売却弁済とリースバックでそのまま居住を続ける。