売上を伸ばしても利益は増えない

「売上を伸ばせば利益は増える」

多くの経営者はこう考えて、売上を伸ばそうとします。
コストもかけ、時間もかけ、一所懸命頑張って売上を伸ばそうとします。

しかし、売上を伸ばしても、必ず利益が増えるとは限りません。
売上を伸ばしたことで利益が減少した会社もあります。
なかには、赤字になった会社もあります。

そして、売上を伸ばしたにもかかわらず、利益が減るときの原因のほとんどは材料費などの原価が増えたことによります。

「えっ! 材料費は変動費なんだから、売上が増えたら増えるのは当たり前でしょ。それで粗利や営業利益が減るのはおかしいと思う」
以前にクライアントからこう言われたこともあります。
このクライアントは、変動費は売上に比例すると思っていました。

「売上が増えたら変動費も増える」

しかし、これは間違いなのです。

「売上が増えても変動費は増えない」こともあるのです。

変動費のことを間違って理解していると、「売上が増えたら材料費は増える」と考えてしまいます。

変動費は売上に比例しない

変動費は売上に比例する費用ではありません。
販売数量に比例する費用のことをいいます。

業種によっても違いますが、材料仕入れなどのことです。
余談ですが、外注費も変動費ではないというケースが非常に多くあります。
このことについては、私の書籍に書いていますので、そちらをご覧ください。

変動費は売上に比例する費用のことだと専門家と言われる人までもそう思っていますが、この考え方のせいで利益計算を間違ってしまい、増えると思っていた利益が増えなかったり、時には赤字になってしまうのです。

例を挙げて説明をしたいと思います。

この表は、今から売上を伸ばそうとする会社の状況を表しています。
売上1000を1100に伸ばしたとき、営業利益はどうなるでしょうか?

  ア)120
  イ)150
  ウ)わからない

正解は「わからない」です。

先ほどの表の「現状」を作り変えたのが下の表です。

現在の売上1000を「一商品あたり」と「販売数量」に分解したものです。
一商品あたりの単価100、変動費30ですから、限界利益は70。
これに数量を掛けると、右側の会社全体の数値になります。

実は、この表の考え方は会社経営にとってとても大切なことなのです。

会社を改善し成長させる意思決定と判断を行う

会計で重要といわれる損益計算書には、収入と支出を売上と原価、販売管理費という区分に分けて載せていますが、変動費、限界利益、固定費という区分では分けられていません。
原価には、変動費と固定費が入り交じっており、在庫や減価償却も計上され、その在庫も評価額が変わることで、損益計算書で計算される利益が全く変わります。
さらに、利益を増やすための取り組みを検討するのに重要な「単価と数量」という2つの要素が損益計算書には記載されていません。

会社を経営するということは、意志決定と判断の連続です。
この意思決定と判断が正しくなければ、会社の成長を止めるだけでなく、経営危機さえも招くこともあります。
適切な意思決定と判断をするためには、会社の現状が正しく把握できなければなりません。

適切な意思決定と判断を行う
会社の現状を正しく把握する

ところが、売上を伸ばそうと思い、会社の現状を知って対策を考えようとしても、会計でよく使われる損益計算書では、適切な対策を見つけることはできないのです。
損益計算書は税金を計算するために作られた書類であって、会社経営を行うための書類ではありません。

会社の現状を正しく把握し、会社の成長を実現し、改善を行うための意思決定と判断をするためには、

・売上が単価と数量に分けられている。
・販売数量に比例する費用を変動費とする。
・それ以外の費用を固定費として考える。
・在庫や減価償却で利益が左右されない。
というようなことが考慮された損益計算書でなければなりません。

このことについて書かれている書籍はこちら

売上と利益は関係ない

さて、先ほどの表の売上高1000を1100に伸ばしたとき、限界利益と営業利益はどうなるのかをご説明したいと思います。

まず最初は、単価100を110にあげ、販売数量は今までと同じ10だとして考えてみます。

 

販売単価が100から110になりましたが、一商品あたりの変動費は変わりません。
単価アップは、営業販売側での取り組みであって、変動費を下げることではありませんから一商品あたりの変動費は変わりません。

単価110から一商品あたり変動費30を引いて、限界利益は80となります。
単価110に、数量10を掛けると売上は1100。
一商品あたり変動費30に数量10を掛けると300。
限界利益は800となります。
固定費が今までと変わらない650ですから、
利益は50から150へと3倍に増加します。

先ほどの答えでいうとイ)150ですね。

ポイントは、一商品あたり変動費は単価が上がっても変わらないということです。
売上が伸びた要因が単価のアップであれば、変動費は変わりません。
売上が伸びたからといって変動費が必ず増えるものではないということを経営にどう活かすかがとても重要といえます。

次に、単価100はそのままで、数量を10から11に増加させたとした場合の利益はどうなるでしょう。

左側の表にある「一商品あたりの販売単価、変動費、限界利益」は、売上を伸ばす前と変わりません。
数量が10から11になり、この数量と左表の単品あたりの単価、変動費、限界利益とを掛けたものが右表です。
売上は1100、変動費は数量と比例しますから、30×11=330に増加します。
限界利益は1100-330=770。
固定費は650で変わらないことから、利益は120となります。

このときの利益は、先ほどの販売単価を伸ばして売上1100の場合の利益よりは少なくなりましたが、最初の利益50から240%増の120になりました。

最後に、単価を引き下げて数量を伸ばすことで売上を伸ばそうとする場合です。

単価は100から30%減の70。
一商品当たりの変動費は、販売単価が下がっても数量が変わりませんから30のまま。
限界利益は、単価を下げたことが影響し、70−30=40。
数量を10から15.7に増やし、売上は70×15.7で1100。
全社の変動費は、30×15.7=471。
全社の限界利益は、1100-471=629。

同じ売上1100であるにもかかわらず、限界利益は最低となり、固定費は650と変わらないことから、利益は赤字になり▲21。

よく単価を下げて受注したという話をクライアントからも聞いたりしますが、この例のように受注数量を大幅に増やしても、同時に固定費を削減できないと赤字になってしまう可能性が非常に高いということです。

値下げで利益を出すという方法は、一商品あたりの限界利益を減らさないよう、一商品あたり変動費を削減できるか、固定費の削減で限界利益の削減分を補えるかができないとやってはいけない戦略なのです。

わかりやすくするために極端な数値で例を挙げましたが、これら3つの例をモデルとすることで、いくつものシミュレーションができるはずです。
ポイントは、「一商品あたり」の実績データを算出し、それに販売数量を掛けて全社の数値実績を把握しておくことです。

このような考え方を持っておけば、
  ・自社にとって、現状を踏まえて、どのようにして利益を増やすことが可能なのか。
  ・その取り組みで利益はどれくらいふやすことができるか。
  ・利益が減ったり、赤字になった会社の場合、その原因は、単価が下がってしまったことなのか。数量の変化なのか。固定費の増加なのか。
ということがわかり、利益を増やすためにどうすればいいかという方針と具体策を立てることもできます。

損益計算書を使わない。
変動費は売上に比例しない。
是非、これからの経営に活かしてください。

あなたの会社が利益を増やすにはどうすればいいか。
その答えは、個別相談でお話させていただきます。
是非、ご活用ください。

なお、個別相談の枠には限りがありますので、お早めに申し込みください。

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